長野県長野市で民家バンクに登録されていた築150年以上経つH邸を神奈川県横浜市に移築再生したプロジェクト。

屋根形状は、この地域に良くある煙出し用の腰屋根(櫓)が無く、養蚕が行なわれる前の形をとどめていたが、移築先の横浜市では、高温多湿の夏に室内の通風換気を検討し、信州民家の特徴でもある腰屋根を設けた。

構造的材の強度の不安から使用しない部材を長野県林業センターに運び込み、実大材曲げ・圧縮試験を実施を行い安全性を確かめ、古民家にはつきものである傷みや腐れなどの不具合箇所を徹底的に調査し整備・補強することで、部材強度を確保した。

また、使われていた木材の再利用のみでなく、附属屋で解体した土蔵の蔵戸や、当社で保管している地域で止むを得ず解体を余儀なくされた建物に使われていた部材(古材)の使用を提案し、傷みにより再利用できない部材を補填した。民家と共に歴史を刻んできた蔵戸は、玄関土間と居間の入口に設置し、保管していた古材の中から、地域の民家に使われていた太い栗の柱を引き割り、踏み板や側板に加工して階段に、長野市内の中学校の木造校舎に使われていたブナの階段側板を、ダイニングテーブルに、敷居には、今後100年以上は使えるようにと、地域材の本桜に交換するなど、現在では希少価値の高い古材をふんだんに使った空間に仕上がった。

設計監理補佐として設計図書の作成および修正、確認申請業務を担当

施工管理補佐として施工図作成を担当

木造/2F/延床面積168.52㎡