平成29年に重要伝統的建造物保存地区(以下重伝建)に登録された長野県長野市戸隠で最初の工事である。
白金屋は在家と呼ばれる社家以外の家で、かつては麻やそばの栽培や民宿を営んでいた。地元の大木の栗や欅がふんだんに使用して昭和11年(1963)頃に建築され、間口約13間、奥行5間、木造2階建、平入、切妻造、木羽板葺でその後鉄板を被せている。軒は垂木および野地板あらわし、外壁は真壁造漆喰仕上げである。創建以後数度の増改築を重ね現在の間取りとなったが、軸組や小屋組は良好であり、間取りも創建当時からほぼ変わらずに残されていた。
重伝建の事業は修景であり、出来る限り創建当時の状態に復元するという工事となる。当時の記録や写真から外観を検討し、1階出し桁や2階廊下手摺、木建や戸袋などを設計者、施工者、行政と協議を重ね復元し、見事に現代に旅館として蘇り、先々代からの宿屋としての思いも引き継いでいる。
設計図、施工図作成や納まりの検討を担当
木造/2F/延床面積298.82㎡